クリニック開業以来、年末年始とお盆以外まとまった休みは取れなくなりました。元来放浪癖のある私は、忙しい時ほど無性にどこか遠くへ行きたくなります。そこで週末や連休を利用して、時々気分転換、ストレス発散、現実逃避の旅行を敢行して来ました。今回は2006年10月の旅行を振り返ります。
餘部鉄橋は山陰本線の日本海側、鎧駅~餘部駅の間に架かる長さ310メートル、高さ41メートルの旧い鉄橋です。開通は明治45年、トレッスル橋と呼ばれる美しい形態で、橋脚の鋼材はアメリカから門司港経由で海上輸送されたそうです。開通以来長らく現役でしたが、ついに2007年3月から新鉄橋への架け替え工事が始まることになりました。今まで何度か餘部鉄橋を列車に乗って渡ったことはありましたが、餘部に下車したことはありませんでした。また同時に、大阪と香住・浜坂・鳥取を結ぶ特急「はまかぜ」に使われているキハ181系(昭和43年から製造された国鉄時代の旧いディーゼル特急)にも乗り納めをしておきたいと思いました。キハ181系はかつて中央西線の特急「しなの」や、奥羽本線の特急「つばさ」、伯備線の特急「やくも」などに使用され、私には馴染みのある車両でしたが、今では「はまかぜ」に使用されるのみとなりました。
決行は餘部鉄橋架け替え工事開始まで半年を切った2006年10月7日。大和市基本健診が一段落した土曜日、いつもどおり夕方までの診療を終えてから東京駅に向かいました。東京駅22:00発の「サンライズ瀬戸・出雲」は横浜にも停まりますが、夜行列車は何としても始発から乗らねばなりません。
東京駅の入線は発車時刻のわずか10分前。慌しく乗り込みます。始発時は14両編成の寝台電車ですが、途中岡山で切り離して「サンライズ瀬戸」は高松へ、「サンライズ出雲」は出雲市へ向かいます。今回は「サンライズ出雲」で伯備線経由で米子まで行き、山陰本線で餘部へ向かう予定です。
寝台特急ですが、いわゆるブルートレインと呼ばれる青い客車列車ではなく、サンライズ(日の出)を意識した色調の電車です。ほとんどが個室、2階建て構造で、シャワールームやラウンジもあります。残念ながら食堂車はありません。今回はシングルデラックスという1人用個室を奮発しました。個室の内装はビジネスホテル風で小さなデスクとベッド、洗面台、それに小さな液晶テレビモニターが付いています。通路は温もりのある木目調です。
定刻に東京駅を発車。スピードが上がってくると、当然のことながらそれなりの揺れと騒音はありますが、これが結構楽しいです。揺れる中でシャワーを浴びます(カードを入れると6分間お湯が出ます)。寝心地は上々ですが、神経質な方は眠れないかも・・。深夜の東海道本線、山陰本線を軽快に飛ばし、岡山に6:27着。切り離し作業の後、「サンライズ出雲」は伯備線に入ります。中国山地を越えて米子駅に9:09に到着しました。
米子は、さかなと鬼太郎の町境港(水木しげる氏の出身地)へ向かう境線の始発駅。ホームでは鬼太郎がお出迎え、車両にも妖怪がペイントされています。
境線のキハ40系のテールライトは「目玉おやじ」の黒目になっています!。
米子からスーパーまつかぜ6号で鳥取へ。鳥取からのローカル列車を途中浜坂で乗り継いでやっと餘部に着いたのが12:41でした。実に東京駅を出て14時間余り!。餘部は鉄橋の手前の山の上、ホーム1本だけで周囲は何も無く静寂・・・のはずが、ビックリ。ものすごい人出です。列車から降り立った人数よりはるかに多い。ここは原宿駅??。
餘部鉄橋はいつの間にか観光スポットになっていたのです。小旗を持ったバスガイドさんに引き連れられて、鉄橋下の国道に停められた大型観光バスからゾロゾロと観光客が上がって来ます。鉄橋のビューポイントである裏山のお立ち台(鉄道ファンの間では撮影ポイントのことを「お立ち台」と言います)は、赤ちゃんからお年寄りまで、立錐の余地もありません。
お立ち台で待っていると、目的の特急「はまかぜ」がやって来ました。バックは日本海です。普段はわずか4両の編成ですが、今日は6両に増結されていますので少しは絵になります。
観光バスの観光客が隣駅まで一駅列車に乗って鉄橋観光をするので、たった2両のローカル列車は通勤電車のような混雑です。
駅から下の集落へ向かう途中から見た鉄橋です。壮観です。お立ち台の混雑に疲れて、早々に撮影を切り上げ、今晩の宿泊地の城崎へ向かいます。
翌日は快晴。大師山から見た城崎温泉です。城崎からキハ181系の特急「はまかぜ」で播但線経由で姫路へ。播但線は途中「生野越え」のある勾配の厳しい路線ですが、キハ181系は元来の強力エンジンで難なく山越え。姫路から新幹線で帰途に着きました。
下の写真は1973年8月に撮影したまだ若かりし頃のキハ181系です。この時代の国鉄色の方が今のJR色よりカッコいいですね。
翌日からはまた普段通りの診療です。頑張らねば。(2008.6.15記)
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